10月 302010
 

2010年10月9日(土)から11月7日(日)まで水戸芸術館現代美術ギャラリーで石元泰博さんの写真展が開催されています。

「君の写真は、アメリカ的でドイツ的、そしてとても日本的だよ」

これは、アメリカの写真家Harry Callahan(ハリー・キャラハン)*1が1960年頃石元さんに言った言葉です*2。石元さんの写真がアメリカ的でドイツ的、また日本的でもあるとはどういうことでしょうか。

石元泰博 《多重露光》 高知県立美術館所蔵

石元さんは1921年にサンフランシスコで生まれ、その後父の故郷である高知県に帰郷し、1939年に再びシカゴへ渡ります。その後10年以上アメリカで暮らしています。つまり「アメリカ的」とは石元さんがそこで青年時代を過ごしたため、と説明がつきそうです。

では「ドイツ的」はどうでしょうか。

シカゴに渡ったのち、石元さんはバウハウスの教育理念を継承した「ニュー・バウハウス」で教育を受けました。バウハウスとは1919年にドイツのワ イマールに創設された国立の工業美術学校で、ヨーロッパ中の美術教育に大きな影響を及ぼしました*3。バウハウスは1933年に閉校しますが、1937 年、シカゴにニューバウハウス*4が設立されます。ハリー・キャラハンは1946年にここの教授に就任しています。石元さんの写真のドイツ的な部分の所以 はここにありました。

石元泰博 《桂》1954 高知県立美術館所蔵

ハリー・キャラハンに言われた言葉に対して、石元さんは当時、「アメリカで暮し、ドイツ的な学校でデザインを学んだのだから、私の写真にはアメリカ とドイツはあるが日本的なものはない」と反発したそうです。しかし何年も経った後、 「どこでどう学ぼうが、日本人である私が真剣に創作する時、日本人の顔がいやでも覗く」ことに気づきます。

「アメリカ的でドイツ的、そしてとても日本的」であるとはこういうことだったのですね。

本展覧会では代表作である、「シカゴ」、「桂離宮」、「伊勢神宮」などから300点の作品が展示されています。
会期は11月7日(日)までです。まだ行かれてない方はお早めに。

*1 Harry Callahan(ハリー・キャラハン):1912年デトロイト出身のアメリカ人写真家。 都市、自然、自身の妻を多重露光やミニマルな構図、極端なハイコンストラストなどの実験的で革新的な手法で撮影した。イメージはどこか叙情的。1946年にニュー・バウハウス(インスティチュート・オブ・デザイン)の教授となる。
*2 『石元泰博+滋子--ふたりのエッセイ』より
*3 バウハウスの教授にはWassily Kandinsky(ヴァシリー・カンディンスキー)、Paul Klee(パウル・クレー)、Laszlo Mohoy-Nagy, (ラースロー・モホイ=ナジ)などビッグネーム揃い。1929年より写真がカリキュラムの中に含まれる。
*4 ニューバウハウスとしては、1937年モホリ=ナジによって開校され翌1938年に閉校。1939年にシカゴのデザインスクール(School of Design)として再出発し1944年よりインスティチュート・オブ・デザイン(Institute of Design)と名前を変更した。現在はイリノイ工科大学(Illinois Institute of Technology)の中に吸収されている。上述のハリー・キャラハンの他Aaron Siskind(アーロン・シスキンド)も教鞭を執った。石元さんが入学したのは1948年。

10月 292010
 

青山ブックセンターのスタッフによる写真集紹介のコーナーです。第2回目は石渡朋さんによるUta Barth(ウタ・バース) 『The Long Now』です。

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©Uta Barth

『UTA BARTH:The Long Now』
ウタ・バースは、ドイツのベルリン出身でロサンゼルスを拠点に写真を中心にした作家活動を行うアーティストです。『UTA BARTH:The Long Now』は彼女の初期の作品から最新の作品までを網羅するとてもボリュームのある内容になっています。

子供の頃、強い光を見たあと目を閉じると、瞼の奥に丸い粒々や色のもやのようなものが見え、目を閉じているのに何かが見えている感覚がおもしろくて何度も試みたことがありましたが、ウタ・バースの作品を見ているとその感覚を思い出します。彼女は視覚の認識に興味があり、作品のテーマも「見ること」に一貫しています。

©Uta Barth

本書のなかで彼女は「見る事は見る物事の名を忘れる事」という禅の中の一文を、自分が繰り返し異なった方法で手がけるプロジェクトの狙いをそれ以上に描写しているものはないと語っています。

彼女の作品について考えるときに思うのは、絵画と写真の決定的な違いについてです。絵画は、自分の中の世界を思うように完成できる手段ですが、なかなか自分の枠を超えることが難しい芸術だと思います。一方写真は、目の前に広がる世界を記録できる機械ですが、環境やカメラの性質によって、実は自分が思っている以上にたくさんの情報を読み込んでしまうものです。

ウタ・バースはそんなカメラの特性を活かし、目の前に広がる世界をもっともっとよく見る機会を私達に与えてくれます。しかし、目の前に広がる世界とは何なのでしょうか。果たして私が毎日見ているものは他の人にも見えているものなのか。彼女の作品を見ているうちに、だんだんわからなくなってきました。

©Uta Barth

 Posted by at 6:51 AM
10月 222010
 

William Eggleston(ウィリアム・エグルストン)のジャケット写真紹介。エグルストンの写真を複数のアルバムやシングルで使用したバンドを紹介します。

Primal Scream
2つ目は1982年にイギリスのグラスゴーで結成されたPrimal Screamです。彼らは前編で紹介したBig Starのようにエグルストンと同郷でも知人でもありませんが、アルバム、シングル盤といくつかエグルストンの写真を使っています。

まずは1994年のアルバム「Give Out But Don’t Give Up」。今回紹介するなかで一番有名だと思いますが、この写真がエグルストンだと知らなかった方も多いのではないでしょうか。写真はトリミングされていて、オリジナルはエグルストンの公式サイトで見れます。取り上げた他のジャケット写真もありますので是非探してみて下さい。

1994年のアルバム「Give Out But Don’t Give Up」

2006年のシングル「Country Girl」

同じく2006年のシングル「Dolls」
写真集「Los Alamos」の表紙にもなっている写真です。こちらもトリミングされています。

 

 Posted by at 7:02 AM
10月 182010
 

今日はWilliam Eggleston(ウィリアム・エグルストン) の写真が使われたレコードやCDのジャケットを紹介したいと思います。たくさん*1あるのですが、複数のアルバムやシングルにエグルストンの写真を使用した2つのバンドをとりあげます。

Big Star
1つ目のバンドは、アメリカはメンフィスのバンドBig Starです。1971年に結成されました。日本での知名度はあまり高くないのかもしれませんが、この赤い天井の写真を見たことがある人は多いですよね。メンフィスはエグルストンのホームタウンでもあります。さらにバンドのメンバーとエグルストンは知り合いです。それにしてもMoMAでエグルストンの個展が開かれる前*2にこの写真をジャケットに使うとは何ともセンスが良いですね。

1974年のアルバム「Radio City」

1993年のアルバム「Live at Missouri University」
天井の電球が好きなのでしょうか。

こちらは1979年に発表されたBig StarのリードボーカルAlex Chiltonのソロアルバム「Like Flies on Sherbert」

後編では、もう1つのバンドを紹介します。

*1 すでにいろいろなところで書かれているトピックですので、既出のブログやネット上の記事を参考にさせて頂きました。
http://en.wikipedia.org/wiki/William_Eggleston(英語)
http://blakeandrews.blogspot.com/2009/07/william-egglestons-album-cover-guide.html(英語)
http://harmondrive.com/2010/03/07/william-eggleston-spoon/(英語)
http://www.guardian.co.uk/music/2010/jan/14/william-egglestone-rock-photography(英語)
http://p-a-r-k.blogspot.com/2010/03/william-eggleston-album-cover.html(日本語)

*2 William EgglestonのMoMAでの最初の個展は1976年

 Posted by at 6:59 AM
10月 112010
 

©2008 Google

「世界の写真サイトトレッキング」コーナーでは今日の写真に関するサイトやインターネット上で見れる動画などを、海外のものを中心に紹介していきたいと思います。
第3回目はGoogle LIFEフォトアーカイブです。

だれのサイト?
GoogleとLIFE

どんなサイト?
LIFEマガジン*の1750年から現在までの写真アーカイブを電子化し、検索・閲覧できるようにしたサイト。写真の多くはこのアーカイブサイトで初めて公開されます。

もう少し詳しく
写真は年代や時代のイベント、写真家の名前などで検索可能、またその写真のプリントをオンデマンドで購入できます。当時の写真家によって撮られた膨大な写真のほとんどは発表されることなく、またグーグルによって電子化されなければ人目に触れることがなかったもの。最終的にはライフのすべての写真1000万枚を公開するそうです。

世界中の情報をデータベース化するGoogleのミッションの1つとして行われたこのプロジェクト。ストリートビューやGoogleブックスでは肖像権や著作権の問題で議論を呼んでいますが、電子化によって蘇る過去の写真のアーカイブ化は意義のあるものだと思います。

*LIFEマガジンについて
1936年に創刊されたアメリカの週刊誌。報道写真を中心とした紙面で1930年代から50年代のフォトジャーナリズム全盛時代を支えた。テレビの普及に伴い1972年に休刊、1978年から2000年までは月刊誌となる。2009年からはウェブサイトのみ。

 

 Posted by at 9:41 PM