10月 292010
 

青山ブックセンターのスタッフによる写真集紹介のコーナーです。第2回目は石渡朋さんによるUta Barth(ウタ・バース) 『The Long Now』です。

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©Uta Barth

『UTA BARTH:The Long Now』
ウタ・バースは、ドイツのベルリン出身でロサンゼルスを拠点に写真を中心にした作家活動を行うアーティストです。『UTA BARTH:The Long Now』は彼女の初期の作品から最新の作品までを網羅するとてもボリュームのある内容になっています。

子供の頃、強い光を見たあと目を閉じると、瞼の奥に丸い粒々や色のもやのようなものが見え、目を閉じているのに何かが見えている感覚がおもしろくて何度も試みたことがありましたが、ウタ・バースの作品を見ているとその感覚を思い出します。彼女は視覚の認識に興味があり、作品のテーマも「見ること」に一貫しています。

©Uta Barth

本書のなかで彼女は「見る事は見る物事の名を忘れる事」という禅の中の一文を、自分が繰り返し異なった方法で手がけるプロジェクトの狙いをそれ以上に描写しているものはないと語っています。

彼女の作品について考えるときに思うのは、絵画と写真の決定的な違いについてです。絵画は、自分の中の世界を思うように完成できる手段ですが、なかなか自分の枠を超えることが難しい芸術だと思います。一方写真は、目の前に広がる世界を記録できる機械ですが、環境やカメラの性質によって、実は自分が思っている以上にたくさんの情報を読み込んでしまうものです。

ウタ・バースはそんなカメラの特性を活かし、目の前に広がる世界をもっともっとよく見る機会を私達に与えてくれます。しかし、目の前に広がる世界とは何なのでしょうか。果たして私が毎日見ているものは他の人にも見えているものなのか。彼女の作品を見ているうちに、だんだんわからなくなってきました。

©Uta Barth

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 Posted by at 6:51 AM

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