12月 192012
 

Alec Soth(アレック・ソス)のワークショップ(後編)です。

前編はこちら

**********************************

ソス: OK。さっき君はプロの写真家になるつもりはないと言ったね。じゃあこれは誰のために、誰に向けてつくっているの?

アントニオ: いや、プロの写真家になろうとはしていないけど、もちろんたくさんの人に見てもらいたいとは思っているよ。

ソス: 僕の友人の写真家の話をしようか。彼は特に有名ではないし名前はあえて出さないけど、彼は常に写真を撮っていて自分で写真を編集しては本をつくり続けている。1年で8冊はつくるよ。

ソス: それはそれでいいことだよ。なにも問題ない。ただそんなにたくさんの写真があるとどうしてこれを選んだのか、なぜこの写真がこっちよりいいのかって思う。君の作品もそう。

これは来週の「Democratic Jungle」と題したレクチャーで話そうと思ってたことで、どのように写真がDemocratic(民主的)になっていったかという話なんだけど。

William Eggleston(ウィリアム・エグルストン)は知ってるよね。彼は『Democratic Forest』という写真集を作っているけど、彼はある日森の中を歩いていて、突然まわりのものすべてが興味深く見えた。すべてのものは被写体になりえると悟ったんだ。他のたくさんの写真家も影響を受けたし、みんなすごく素敵なことだと思った。なんでも写真に撮れる、天井のライトだって、一見つまらなそうな空き地だって、あれもこれも全部写真になる。

ソス: それからその民主的(democratic)な撮りかたが世の中にあふれかえった。些細で素敵な日常を撮った写真だらけになってしまったんだ。それらをいま撮る意味ってなんだろう?

自分のためだったらいい。世界を新鮮な自分だけの視点から見ることができる。だから写真はすばらしいしたくさんの人の趣味になるんだ。

ただもう一歩先に行くには、それらを撮るだけではなくて、それらを形づける何かが必要になった。少なくとも僕がいいと思える作品には必要なことなんだ。

ソス: 僕がいま写真でストーリーを語る手法をつかっているのも、もうこれ以上素敵なフラグメンツ(断片)は僕は撮れないと思ったからなんだ。

君の写真にはたくさん面白いものが写ってる。ただ全体でそれらがつながってこない。だからさらにその上の何かが必要なんだ。例えばリンコ(川内倫子さん)の作品にはそれがある。彼女自身が作り上げた強いものが。だけど世の中にはそんなにたくさんのリンコは求められていないんだ。

 Posted by at 1:17 PM
12月 182012
 

イタリアで行われた、Alec Soth(アレック・ソス)のワークショップの様子がYouTubeにアップされていました。すごい時代になったものですね。早速のぞいてみましょう。

An Italian guy, Antonio Muñoz De Mesa, who participated in Alec Soth’s workshop in Italy uploaded this video on YouTube. Soth is reviewing the dummy books Antonio made. His comments are little bit severe at some part but it’s really worth watching for everybody who is trying to make good works. Thank you Antonio for bravely sharing this experience.

**********************************

(部屋には十数名の参加者、俳優の仕事をしながら写真を撮っているという参加者のひとり、アントニオの作品を見るアレック・ソス)

(1冊目の作品集を見るソス)

アントニオ: これは僕がつくったダミー本なんだ。

ソス: OK。

アントニオ: あともう一冊あって、これはローマでの川内倫子さんのワークショップに参加したときにつくったものなんだ。

(2冊目の作品集を見るソス)

ソス: この水色の紙からはじまるのがいいね。この写真いいね、これもいい、面白い。

アントニオ: どの写真を選べばいいのかわからなかったから全部いれたんだ。

(だまって残りのページをみるソス。かなり量が多い。)

ソス: えーっと、、、じゃあ何を話したい?

アントニオ: 写真家として食べて生きたいわけではないんだけど、コンパクトカメラをいつも持ち歩いて、こうして日記のように写真を撮って本にまとめているんだ。それで、このダミー本について写真が多すぎやしないかとか、流れを変えた方がいいとかアドバイスをいただきたいと思って。

ソス: 写真は多すぎるね。あと横位置の写真の割合が多くて単調になってる。このページのブレイクはいいよね、あとここもいい、だけどその後こんなに写真が続くともうお腹いっぱいになってしまう。

アントニオ: 流れについては?

ソス: これを左ページにレイアウトしたのはすごくいいよね。この写真はあまりよくないな。こっちはいいよね。オレンジがきて、この写真にもオレンジがはいってる。しつこいかも、いやそうでもないな。

アントニオ: 確かに写真が多すぎるのは、今見てもらっていて僕も感じたんだ。ではどうやって。。

————————-

後編に続きます。

 Posted by at 1:15 PM
12月 102012
 

アメリカ人写真家のTaryn Simon(タリン・サイモン)によるTEDでのプレゼンテーション、もうひとつ紹介します(前回の記事はこちら)。

彼女は前のプレゼンで「私の作品制作の90%は、実は写真を撮ることではありません」と言っていました。

今回はどうでしょうか。

 

「私が関心をもったのは、運命にまつわる考えや血縁や偶然や境遇によって運命は決まるのか、といったことです。」

運命にまつわる考え方をテーマに写真を撮る。気になりますね。

続きはプレゼンを見てみてください。

タリン・サイモン「血脈の裏にある物語」日本語字幕付き動画はこちら。

 

 Posted by at 1:21 PM
11月 152012
 

写真雑誌『IMA』での連載「フォトブックスタディーズ」に関わっています。

『IMA』は内容盛りだくさんな雑誌なのですが、ぜひ「フォトブックスタディーズ」もチェックしてみてください。

第1回目はホンマさんの写真集『東京郊外』を軸に、人工的な風景・郊外をスタディーしました。

似たような写真集や、写真集が出版されたときの時代背景、影響を受けた(与えた)作品などを知ることで、写真集を見ることがもっと楽しくなりますね。みなさんもどんどん掘り下げてみてください。

記事には掲載できなかったスタディーをこのブログで紹介したいと思います。

******************************************

郊外を開発した男 ウィリアム・レヴィット

空から見たレヴィットタウン

ウィリアム・レヴィットは日本ではあまり知名度は高くないですが、アメリカでは「モダン・サバービアの父」と呼ばれ、20世紀のアメリカにおいて、ヘンリー・フォードと同じくらい重要な人物だともいわれています。

第2次世界大戦と軍人用住宅

レヴィットは第2次世界大戦中、入隊した海軍で設備隊の一員として働きます。そこでは、さまざまな軍事用施設や住宅を低コストで短期間のうちに大量に建設する必要に迫られます。しかし、はじめは全くうまくいきません。職人のスキルはばらばらで、モチベーションも高くなく、レヴィットはどうすれば効率よく建設できるのか試行錯誤したのち、ある方法にたどりつきました。

早く、安く、上手く

レヴィットは作業の工程を細かく区切り、グループ分けした職人たちに決まった工程だけを担当させました。作業員は全工程を覚える必要がなく同じ作業に集中できることで、ミスも減り、熟練した職人でなくてもうまく作業が進むようになりました。また作業の効率が格段にあがったことで、コストも安くなりました。

ジャガイモ畑に町を

効率よい住宅建設のノウハウを得たレヴィットは、戦争が終わったあとに民間人にもどる軍人が住むための家が大量に必要になるはずだと予想していました。そこでニューヨーク州ロングアイランドの広大な農地を購入し、住宅だけでなく、学校や病院、商店などをもつ郊外コミュニティをつくることを決意します。それを彼はレヴィットタウンと名付けました。

同じかたちの家が並ぶレヴィットタウン

アメリカン・ドリーム

1950年代のアメリカで、高速道路網の発達や、車の大量生産、建築基準の規制緩和などの時代の波ともシンクロし、ニューヨーク郊外につくられたレヴィットタウンは大成功をおさめます。その後、同じスタイルのレヴィットタウンがアメリカ中に広がっていくことになります。

日本も郊外

レヴィットタウンをお手本にアメリカ中に広がった「郊外」は、海をこえて、1970年代には日本にもやってきます。戦後に田園都市線沿線を開発した東急不動産は、ウィリアム・レヴィットの会社、レヴィット・アンド・サンズ社と、短い間でしたが提携をしていました*1。レヴィットタウンは日本の郊外にも影響を与えたんです。

コカ・コーラやマクドナルドだけでなく、「郊外」というライフスタイルも、アメリカからやってきたものの一つだったんですね。

Takashi Homma, Boy-4, Sagamiono, Kanagawa, from Tokyo Suburbia

スタディーは続きます。

【関連する本】
デイヴィッド ハルバースタム『ザ・フィフティーズ〈第1部〉1950年代アメリカの光と影』 レヴィットタウン、ディスカウントストア、マクドナルド、キンゼー・レポートなど1950年代のアメリカがぎっしり。第3部まであります。
- 三浦展『「家族」と「幸福」の戦後史』 副題は「郊外の夢と現実」。レヴィットタウンについては、第3章の「レヴィットタウンとアメリカの夢」に書かれています。日本の郊外に関しても詳しいです。

 

 Posted by at 6:50 PM
10月 122012
 

自分で写真を撮らなくても作品を作ることができるんです。カメラを使わない写真作品を紹介します。

If you don’t have a camera, you can make photographic work. I would like to introduce photographers/artists who don’t shoot photographs.

******************************************

ファウンド・フォトは1枚では成り立ちません。たくさんあったほうがいいんです。多いが勝ちです。

ドイツ人アーティスト、Hans-Peter Feldman(ハンス-ピーター・フェルドマン)はとにかく集めます。

Found photography does not consist of a single photograph. It’s got to be more. The more the better.

German Artist, Hans-Peter Feldman collects photographs a lot.

写真集『PORTRAT』より

家族写真を編集したシリーズ。

from PORTRAT

Collection of family album photographs.

どこでしょうか?

Where is it?

いつでしょうか?

When was it? We don’t know.

写真集『Voyeur』より

いろいろなイメージが等しく並んでいます。

From Voyeur

All kinds of images are being juxtaposed.

説明はありません。

No caption.

だから先入観なく「写真」見られます。

That’s why you see these images without any bias.

写真集『Album』より

ポートレートも撮るんじゃなくて集めるんです。

from Album

Feldman does not shoot portraits, but collects.

エッフェル塔も撮りにいくんじゃなくて集めるんです。

He does not go to Eiffel tower because he collects.

多いが価値です。

The more the better.

 Posted by at 9:36 PM